2016年7月26日火曜日

ドキュメンタリー映画鑑賞メモ

たまにはノンフィクションでも観ようかと、2本ドキュメンタリー映画のDVDを借りた。


『消えたフェルメールを探して 絵画探偵ハロルド・スミス』
2008年
http://www.uplink.co.jp/kietavermeer/

これは、ガードナー美術館で盗まれた絵画のうち1点が、フェルメールの『合奏』という名画で未だに見つかっていないこの作品の行方を追う、というものである。
そんなもの、探して見つかるようなものなのかと思ったのだが、これが、見つかりそうな感じがするのである。
一時期日本のテレビで流行った徳川埋蔵金の発掘ドキュメント番組よりは、少なくとも真実に近づいている気迫があった。
怪しい情報、怪しい人物、怪しい人脈・・・

登場人物は皆リアルで、それぞれが個性的で怪しい。とにかく犯罪の匂いがする。
しかし、有用情報への賞金もかなり高額なのに、決定打につながらない。なぜかといえば、FBIも警察も、絵が戻ってくることではなく犯人逮捕に主眼を置くからなのだ。このねじれが、絵画盗難の解決をすべて邪魔してしまう。裏には、政治組織の資金集めの影さえうかがえる・・・
かなりハッキリ、犯人組織像のモンタージュは描いてあるのだった。

絵画探偵は全身皮膚癌で、それも強烈な個性である。進め方、一言一句も興味を誘う。絵画探偵のプロというのは面白い。
しかしけっきょく絵は見つからず、探偵もじきに亡くなってしまったとのことだった。


『おいしいコーヒーの真実』
2006年、英米
http://www.uplink.co.jp/oishiicoffee/

1990年代からのコーヒー豆の暴落以来、スタバやネスレの買い付ける豆の生産地・エチオピアのコーヒー農家は、基本的な生活さえできないほどのひどい状況なのだそうだ。
ニューヨーク市場が勝手な安値を付け、それが世界相場になる。消費者に渡るまでに6度ほどの取引が挟まれてコーヒー農家は買い叩かれる。コーヒーとは別の換金作物である麻薬の栽培に手を出す。子どもの飢餓が広がる。
まあ、酷いものがある。
そして映画の常用手段ではあるが、表の世界と裏の世界とのコントラストを際立たせる。・・・先進諸国の街のカフェはオシャレで清潔、人と人との繋がりを大切にする爽やかさ。コーヒー1杯は高めだが、味よし、香りよし、接客よし、雰囲気よしで言うことはない。企業は儲かりっぱなし、バリスタは腕に人生を掛けて文化は豊穣の様子・・・

そもそも数年前、WHO主催のアフリカ会議で、EUやアメリカは公正な会議を標榜しながら、とんでもなく不公平に自分たち有意にことを運ぶ会議を展開、会議は決裂したのだった。それはそうだろう。(そしてこの延長線上に現代のテロだってあるのだろうと思った。。)
コーヒー農家の飢える子どもたちをほとんどどうにもできないエチオピアの惨状、ノーコメントのコーヒーショップ欧米優良企業たち。

このドキュメンタリーでは、つまるところ「フェアトレード」を促している。世界の市場が公正に取引されていないからこうなるのだ、ちゃんと最低限のレートを確保した製品を買うべきだ、消費者と生産者は無関係ではない、と。
しかし・・・映画を(早回しで)見終えてちょっと考えると、とてもフェアトレードで解決、とはいかないと思った。

まず、何度も何度も思ったのは、この絶望に似た状況を変えようと頑張っている奇特な人は何人もいるが、1人の二宮尊徳も出ないところが日本とは違うのではないか、ということだ。
二宮尊徳は、無一文の奉公人から一気に大農家へと駆け上がったベンチャー的人間だが、何が一番大事なのか、その都度ポイントを徹底的におさえた合理主義者であった。だからこそ、藩や村の立て直しをわんさか実現し、天明の大飢饉で関東一円に餓死者を出さなかったといわれる。

エチオピアのコーヒー農家のコーヒー豆を適正レートで買うのも大事だろうが、それで解決はするまい。
農家の一番の強みは何か。それは、口に入るものを自分で確保できる点にある。

二宮尊徳は、(伝説だが)秋茄子をひとくち食べてその味で飢饉を予測し、もう育っていた綿花や菜種などの換金作物をすべて引っこ抜かせて、ヒエ・アワなど腹を満たせる作物に急遽変えさせたという。
生産がダブついているコーヒーをずっと作っていて良いわけもないと思った。

また、先進諸国に搾取され続けるのは学が足りないせいだということで、なけなしの金を学校づくりにあてるという希望が描かれていたが、これもどうだろうと思った。
インフラ整備よりも、人材・知恵というのであれば、何かしらの工夫が色々できるのではないか・・・そんな気がした。

ところで、私はコーヒー飲みだが、UCCやネスレはうまいと感じたことがない。
スタバは時々入る。接客は高質だが、価格も高い。コーヒー自体は濃すぎて、最近は味も良くないので甘いもの(キャラメルマキアート)で自分を誤魔化す。
こんな味で、よくお客が入るものだ。そしてトレード面でもフェアではないのだから困ったものだ。

私はけっきょく、自分で淹れたものが一番好きだ。キーコーヒーである。外で飲むならタリーズやドトールが好きだ。安上がりにできている。
でも、いずれにしても、コーヒー企業のほとんどは、フェアなトレードなど気にしていないのだろうと憶測する。
結局私は何もできない。
罪の意識をちょっぴり混ぜ込みながら、ミルク入りコーヒーを嗜み続けるであろう。
ドキュメンタリー映画を観た後、よく感じるモヤモヤ感だけが、たしかにあった。




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