2016年8月24日水曜日

椅子も机も高くしよう

21世紀に入って16年目になるが、現代日本は本当に文明文化の国なのだろうか?・・・
などと、生活文化の不具合に感じることはままある。

たとえば、神奈川や茨城にいたときは、冬になるととんでもなく寒い室内で暮らしつつ、夏を待ちわびた。
関東の木造住宅はたいてい寒い。金持ちのおうち以外では。
囲炉裏があった昔は室内温度が適切だったという人もいるから、多分、われわれの文明は後退したのだ。

司馬遼太郎の講演CDを20年ぶりくらいにかけていたら、モンゴルのフェルトで作ったテント「パオ」が、冬でも夏でも極めて居心地がいい室温であると同時に、地球環境にまったく負荷をかけない生活文化なのだと言っていた。
(なお、司馬氏によれば、文明とは普遍的・合理的なもののことを指し、文化とは非合理なもののことを指すのだという。たとえば毎年年始に初詣に行くのは非合理なので、立派な文化なのだそうだ。)

一般的によくいわれるのは、台所のキッチン周りや脱衣所の蛇口などの高さは、現代人が使い続けると腰を痛めるということである。昔の日本人の平均身長に合わせて規格がつくられてあるままなのだ。背の高い夫婦の友人宅は、それを考慮して何もかもにグンと高さをもたせてあったが、それは個人の工夫であって一般文化ではない。
そういえば、私は毎日、シャワーの高さが足りないと感じている。身をかがめて生活することが多い。

なかでも、とりわけ私がずっと不服だった生活用具は、デスクチェアだ。
ニトリで買った常用しているデスクチェアには、ちゃんと高低を調節できるレバーが付いている。だがしかし、・・・最高の高さにしてもまだ高さが足りない。私の脚がとりわけ長いというわけでもないのだけれど、足裏が床に押し付けられ、常々、膝が折れて窮屈なのである。
約5~7センチほど高いといいのだが。

「じゃあ、座布団でも敷けば?」

と言われそうだが、この椅子を買うときに選んだ理由は、座席の心地よさと背もたれの加減だった。座布団を敷いてしまえば、いずれの価値も無に帰することになる。
しかもデスクチェアの座高を高くすると、こんどはパソコンデスクと筆記机が相対的に低くなってしまう。

日本の机周りの文明もしくは文化というものの品質や規格は、だいたい、こんな程度止まりなのである!
私は、根気強くこれらの問題を根本的に解決するべく考えた。
そして、――椅子も机も、ぜんぶ高くしてやろうと決めた。

こうしたわけで、数日前から準備を重ね、今日はひさしぶりにDIYを楽しんだ。
デスクチェア、筆記机、パソコンデスク、すべて高さをもたせる根気仕事である。暇ではないのだが・・・

  *

いちばん苦労したのは、デスクチェアの足の工夫だった。
そもそも最初は、座席の板底を嵩上げしようと考えたのだが、六角ボルトで主軸・背もたれ・肘かけと絡み合わせて組んである構造上、それが無理と分かった。あとは椅子の足元の工夫となるだろう。

同じようなことを考える人はままいるようで、ヤフー知恵袋も見たが、あまり参考にならなかった。工夫した解答をしている人もいたが、私のセンスに合わなかった。

※参考URL↓
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/6784434.html
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12130278342

で、私はどうしたかというと、デスクチェアに付いている5つの車輪の付け根に高さをもたせることにした。
ということで、車輪の接続金具を買いに2つのホームセンターを訪れた。
が・・・そういうモノは売っていなかった。
車輪は車輪ごと売っており、その付け根の部品は非売なのである。インターネット上でも同じだった。

1週間ほど前、妻と子どもたちだけがお盆に帰省中であった。
うちの子どもが留守なのを知りながら、同じアパートに住む子供らがヒマすぎで退屈しのぎに遊びにきた。私も退屈しのぎにこの子供たちを連れ、ゴミ処理場へと足を運んだ。ときどき古いガラス工芸品を探しに出向くことがある。粗大ごみを出しにもそこへいく。

案の定、日曜日なので山のようにデスクチェアも積まれていた。
2日間で2市のみでこのゴミの量。人類は地球を滅ぼすだろうと想像できる。未来を担う子供たちには、こういう社会の裏面を見て、どうにかして対処して欲しい、などという淡い気持ちがどうしたって湧き起こる。

だが、・・・今回の私の目的はイスの足車輪であった。
ウハウハした手つきで宝の山を漁り、あっという間に5つをゲットした。連れてきた子供たちも頼んでいないのに2つほど取って渡してくれた。
私は気がつかないうちに、指に3箇所の切り傷を負っていた。
子供のひとりが、「知らないうちに怪我するのが、一番こわい」などとコメントした。

帰宅して金具のみを車輪から取り外そうとした。
外そうとしたのだが・・・これがどうしてか、どうしても外れないのだった。
引っ張れば取れるはずなのだが、外れない。断固として、外れない。

何か方法がないものかと、数日後に琉球ガラス村の加工部を訪れ、元上司たちに雑談をしに訪れたふりをして、おもむろに相談を持ちかけた。
仕事中にもかかわらず、2人の元上司が工具をもってしてトライしてくれたのだが、やはりダメだった。ノミで車輪を打破しても、バーナーであぶっても、どうあがいても取れなかった。
琉球ガラスにコールドワークを施した後、保温しておくためのオーブン(68℃)がある。とりあえずそこに放り込んでおけと元上司が言うので、そうしておいた。

また数日後に遊びに行った折、入れておいたイスの車輪をオーブンから取り出し、ニッパーでテコ入れした。
すると、「ぽんっ」と面白いほどあっけなく外れた。
「やった、やったー!」
と私が声を出して喜ぶと、元上司は、「あなたの人生は、こんなふうに上手くはいかないのにね」などと、下手なブラックジョークを言った。


で、その金具を、カットした木材に穴を開けて差し込む。
今日、ホームセンター(C)に行き、円柱形の棒材と2×4の角材とを買ってカットしてもらった。
しかし、ここの担当が、偉そうなくせに実にショボい男なのだ。
今回も、カット後に再度そこへ戻り、苦情を言って60円を返金させた。なにしろ、私が寸法・カット手順・カット回数にいたるまで丁寧に図を描いて説明したのにもかかわらず、テキトーにカットしてカット回数を増やし、頼んでいない部分まで切り落とし(!)、ボっていたのだ。最低である。
それを指摘したら、強気の文句調で言い訳をしてきた。
私は、多少怒った。
彼の言が合っていれば言い訳もいいのだが、誰がどうみても2箇所も間違っているのだから、彼自身もフテ腐れるしかなかった。性根も腐っているから、謝ることすらしない。じつは前回も同じようなことがあったので、私は今回は泣き寝入るのをやめたのだ。

ムカムカしつつ帰ろうとすると、同じ木材売り場に琉球ガラス村の偉い人がいたので、声をかけた。
この人は、道具でも機械でも何でも手作りしてしまう凄い人だ。
ニコニコしながら、「日曜大工かい?」と私のカット木材を覗き込む。
イスやテーブルを高くするのだと言うと、「新しいのを買ったほうが安上がりなんじゃないの?」と笑った。
私は笑ってごまかし、細かな説明は控えた。


切ってもらった木材は、寸法にズレはなかった。まぁ普通に、良いモノだった。
だがムシャクシャする出来事があったため、この木材を見ると切ない気分になる。

  *

木材に穴を開けるためのドリル刃は、2種類買ってあった。
はじめて電動(インパクト)ドライバーでドリルを使った。
DIYは、家内の方が得意で、ぱぱぱっと棚でも机でも作ってしまう。私は、ゆっくりゆっくり、おずおずと事を進める。


長男(5歳)が、ダイソーで買った球形の木材に、ついでに穴を開けてほしいと言った。
で、あまった木材にも穴をあけるよう頼んできた。
それに彼は、私の使い残したイス車輪の金具部品を差し込んで、・・・なんと手榴弾のオモチャをこしらえたのだった!


私は、大の武器ぎらいである。
長男が3歳の頃、家内が買ってきた幼児用のピストルの玩具をみて私は激怒し、長男も家内も大泣き、口論が昂じて離婚話まで持ち上がったことがあった。
家内にしてみれば、「いいじゃないの、おもちゃの鉄砲1つくらい」とのこと。
私からすれば、「3歳にピストル与えて、どんな大人にするつもりだ。しかもここは第二次大戦の激戦地だぞ」と言語道断の態度だった。
その数週間後に、アメリカで5歳の男の子が玩具の鉄砲(マイ・ファースト・ライフル)に実弾を込めて、2歳の妹を射殺してしまう事故があった。私は「それみろ」と言った。
後日、保育園で水鉄砲持参のプール遊びの日があった。長男はしょんぼりして帰ってきて、水鉄砲が竹筒の形だったのは自分と女の子1人だけだったと言っていた。

昨日、私は長男と、同じアパートの子供とを連れて、初めて那覇の「壺屋焼物博物館」へ行った。
博物館の展示品に、本物の陶器製の手榴弾があった。


長男はその陶製手榴弾が気になって、強く印象に残っていたらしい。で、それと同じものを作りたかったようなのだ。
どうみても手榴弾であるその手作り玩具について、私は「もしかして、手榴弾?」と訊く。
長男は首を振り、「まあるい、・・・オモチャ」と答えながら、ピンを抜いたり嵌めたりして、嬉しそうにいじっていた。

  *

ボンドで補強して完了。まぁ、DIYの得意でない私にしては、満足のいく出来栄えになった。
ただ、イス足の軸が垂直でないので、高くなったぶん揺らすとしなって、壊れそうな危うさがなくもない。
祈るような気持ちのある一方で、5つの車輪に65kgの体重だから1つに13kgの荷重・・・それくらいは耐えて欲しい気もする。

なお、写真手前の立ち作業用パソコンテーブルも、脚を長い木材に取り替えてある。
今回のニトリの常用デスクチェアの座席も、合皮が早々とハゲてしまったので、布を貼り付けてある。布は、タッカーと呼ばれる外側に向いた強力ホッチキスで打ち付けた。
おや、気づけばけっこうDIYしているじゃないか――と自分を讃えた、臭い汗かく夏日であった。





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